家具 アールヌーヴォー様式と家具:曲線美が織りなす空間
19世紀も終わりに近づいた頃、ヨーロッパでは、それまでの常識にとらわれない、全く新しい芸術の潮流が生まれました。「アール・ヌーヴォー」と名付けられたこの芸術運動は、フランス語で「新しい芸術」を意味し、その名の通り、従来の伝統的な様式とは一線を画す、斬新で革新的な表現を特徴としていました。アール・ヌーヴォーの芸術家たちは、自然界に存在する有機的な曲線や、植物のしなやかなフォルムからインスピレーションを得て、作品に命を吹き込むかのような、生き生きとした表現を追求しました。それまでの時代を席巻していた、歴史的な様式や装飾過多な表現から脱却し、より自由で、流れるような曲線を多用したデザインは、人々に新鮮な驚きと感動を与えました。この新しい芸術の波は、絵画や彫刻にとどまらず、建築、家具、宝飾品、ポスターなど、あらゆる分野に広がりを見せました。人々の日常生活に浸透していくことで、アール・ヌーヴォーは、単なる一過性の流行ではなく、新しい時代の幕開けを告げる象徴となっていったのです。
